日本のDITAは「炭火革命」(!?)

昨年11月のDITA Festa 2018でDITAコンソーシアムの基調プレゼンでの一コマです.

「(DITAは)米国では燎原の火のように広がった」「日本では熱いユーザーだけが採用」「日本のDITA=炭火革命」

そうなんですね.私は炭火というと豆炭炬燵の方を思い浮かべてしまいます.電気炬燵と違って豆炭炬燵は準備が手間ですが、その暖かさは電気とは違う格別さで、朝方まで持ってくれます.つい数年前まで家の母屋では使っていました.燎原の火はどんどん燃え移ってしまいますが、豆炭炬燵はそんなことでは困ります.その良さを知った人がじっくり使うということなのかもしれません.

昨年も様々なお客様のDITAのお手伝いをさせていただいたり、導入の話を聞かさせていただきました.そこで感じるのですが、必ずしもDITAそのものを意識してその後の道筋を考えておられるのではないということです.では何が後押しをしているかというと、私見ですが次のような動機です.

・ コンテンツの複雑化、頻繁なアップデートが常態化している.もはや現状のやり方では対応できなくなっています.
・ とにもかくにもあふれかえるコンテンツを管理できるようになりたい、つまりCMSが非常に魅力的に映ります.
・ アプリケーション固有のフォーマットでは様々なメディアへの配信を別々に作らねばならず、極めて手間がかかる.XMLを軸にしたコンテンツ作成と配信が必要になります.

ではXMLとして選択肢に上るのは何でしょう.たぶん以下の4つになると思います.

・ DocBook
・ S1000D
・ DITA
・ 自社(独自)仕様のXML

この中で実際的な可能性のあるのは、DITAか自社仕様のXMLではないかと思います.

DocBookは一時代を築きましたがこれから新規に採用しようという話は聞いたことがありません.あるのはDocBookからDITAに移したいという話ばかりです.S1000Dはちょっと毛色が違って航空機の技術文書制作技術として始まっています.業界が同じで目的に沿っていれば良いかもしれませんが、そう手を出す人はいないでしょう.

自社仕様のXMLはある意味自分の思う通りのコンテンツモデルが作れるので自由度は高めることはできるでしょう.でもグローバル化が進む今日において組織や企業を超えた相互運用性を考えるとあまり積極的に採用すべきものなのかという点で疑問があります.また自社で立ち上げるためのパワーと維持管理して行くためのランニングコストがかかります.

こうしてみると、先に述べたような状況の組織や企業は、① まずCMSがどうしても必要になり、② DITAはそれからという道筋になるのではないでしょうか?実際CMSベンダーの多くがDITAをサポートしていますし、DITA専用になっているCMSだって珍しくはありません.

この結果下手をすると「CMSを買ったらDITAが付いてきた」と言うようなビックリするお話も聞いたことがあります.DITAを採用したいのではなくCMSを採用したいのです.現状のコンテンツをDITA化してCMSに載せられて、現状のレイアウトの出力が得られれば目的は達成ということになります.

このようにたどった道筋と、着火していない豆炭に必死に点火して温め、DITAを大事にして歩んだ組織・企業とはおのずから違いがでるように感じます.

その違いは端的に言えばtopicの最後にrelated-linksを入れるか否か?の違いとして現れると思います.CMSを入口としたお客様は決してDITA Open Toolkitが一生懸生成したrelated-linksを出力物上では使用しません.related-linksはtopicの親子関係も表現しますし、reltableで記述したtopicの相互関係もここに生成されます.何よりもこのようなお客様は現状の技術文書のレイアウト優先で、そのなかにはrelated-linksに該当するものがあるべくもないし、reltableを作るほどコンテンツ分析を行う余裕がないからです.related-linksは、DITAのアーキテクチャの必然の結果として中間ファイルに表れますが、これを使うか否かはDITAを活用しているか否かの結果を測れるリトマス試験紙のようなものとなります.

いまや組織・企業が作り出したコンテンツは、そのままではもはやコントロール不能な規模になってきているように見えます.日本のDITAの炭火革命はどのようにひろまっているのでしょうか?ただ一つ言えるのは、それなりの汗をかきながら準備運動して進まないと、先の長い道のりで成功を収めるのはなかなか難しいのではないかということに思えます.