JoAnn Hackosさんが成功のカギとしている次のカギは
"Mapping out your re-use/reconfigure strategy in advance"
「前もってあなたの再利用/再構築戦略の詳細な計画を立てる」
というものです.
このJoAnn Hackos博士のプレゼンの最初に紹介されている、CIDMのアンケートによる生産性向上の指標として最もパーセンテージの多い項目が「topicの再利用の比率」というものでした.ですから組織のDITAの導入に際しては、もっとも積極的な動機がコンテンツの再利用にあることは疑いがありません.
ではそのように何を再利用可能にするのか?と問われれば、相当深いレベルで現在のコンテンツの分析が必要となるでしょう.どこを組織のどの部署が責任を負っているのか?そのコンテンツのライフサイクルはどのようなものか?またそもそもどこまでの範囲で再利用を検討したら良いのか?もちろん組織の名前や住所などは、全体にかかわる箇所ですけれど、他の方も使うことを考えれば、そう簡単には設計はできません.それにDITAを導入すると言っても最初はごく一部分からパイロットで導入して行くのが普通ですから、直ちにどこまでの範囲で再利用するのかと言われればすぐには答えられないかもしれません.
またこの頃DocBookからDITAへの移行で考えてみたことがあります.仕方がないのですが、DocBookではもうそこらじゅうにxrefが存在します.DITAでは基本的に脚注参照や、ol/liやsteps/step(手順番号)を参照するxrefは使っても、topicのbodyから他のtopicを参照するようなxrefはまず使いません.topic間の相互関係はreltableでtopicとは独立させて記述することが当たり前だからです.
ところがすでにDocBookに存在するxrefは、DITAへ持ってくるとき、まずreltableやrelated-linksには変換は難しいです.唯一再利用性を担保するのに残された道はxrefをkeyref化して、直にtopicの@idを参照するのはmap側に記述しtopicの中では決して行わないようにすることです.再利用の戦略にもよりますが、いったんこのような方針でやらないでtopicのbody部分に直に他のtopicへの参照を含めてしまうと、topic間の結合強度が強くなってしまい、再利用は困難になります.このような事態はどうしても避けねばなりません.
このようなことを考えていて思いまだしたのが以下の「DITA 101 Version 2」(2011年 DITAコンソーシアムジャパン訳)という本の一節です.
「統一コンテンツ戦略の開発」
DITAは、単なる構造化ライティングでも単なる再利用でもありません.方法論を転換して、再利用に、オーサリングの分担や協力に、そして文書よりもコンテンツのライブラリーに重点を移すことになります.このことは、どのように作業するかを定義するための統一コンテンツ戦略を必要とします.統一コンテンツ戦略とは、カスタマーへの最適供給のための最終的な(definitive)ソースにコンテンツを統一する(集める)ための実行計画です....統一コンテンツ戦略がなければ、DITAはコンテンツ作成の単なる一つの方法であり、コンテンツへの付加価値はありません.
つまりいくらDITAを採用すると言っても戦略がなければそれは単にコンテンツ作成を(例えばDocBookから)DITAという方法に変えただけ(何ももたらさない)ということなのでしょう.非常に厳しい指摘です.
またJoAnn HackosさんのこのWebinarのベースとなる報告は以下から読むことができます.
The Productivity Paradox
非常に大事だと思われるのが次の一節です.
The productivity paradox is this: years of experience using
DITA do not necessarily result in the expected productivity
gains. Once an implementation gets started badly, it seems to
stay that way or get worse.
ともかく最初が肝心だということです.つまりちゃんと戦略と計画を持てという事なのでしょう.これがなければ何年DITAを経験しようが生産性(productivity)の向上は見込めないというこれも厳しい指摘です.
いやDITAは本当に勉強しなければならないことだらけです.ついてゆくのは本当に大変です.