DITA Festa 2017

DITA Festa 2017

今年も恒例のDITA Festaが東京六本木の東京ミッドタウン/富士ゼロックスを会場に開催されました.今回も会社から「いいよ!」と言われたので出張で参加させていただきました.今回最も興味深かったのは1日目最初のセッションの、「DITA 導入・検討の先人たちが本音で語る、DITA制作の実像」と題したDITAに実際に取り組まれてきて、ある場合は現在は中断したり、また今は導入で真っ最中であったり、また一段落して次のフェーズを目指しているという様々なDITAユーザーによるパネルディスカッションです.

やはり、今までのDITA Festaではどちらかと言えばサクセスストーリーを聞いた印象が強く、それは確かに貴重ではあるのですが、必ずしもいろいろな立場で必死に取り組んでいる人には「そうはいっても自分のところはね~」と思われるのではないかという感じを持っていました.

今回のセッションではそれに比べてまた一味違った印象のお話を伺えたように思います.

既存の(XMLによる)システムの限界性から、DITAによる共有化、トピック志向の利点を訴えたけれど、なかなか上部からは投資対効果を認められずに、いったん導入を断念せざるをえなかったというお話を伺いました.やはり自分ではDITAの良さを感じ取って必死に進めようと思っても、それと組織のなかで導入の承諾を得てゆくのは、また違った苦労が必要なようです.ある意味このような立場の方は、組織の中でDITA導入の必要性の「集団的な共感」を得て、コンセンサスにたどり着かねばならないのでしょう.そういう立場では、世界にいくらDITAの導入組織があり、サクセスストーリーがあっても、自分の組織でプレゼンするときにはひとりで「理論武装」して、DITAを必ずしも知らない人に「ああいいんだな~」と思わせねばなりません.これは大変ですよね.

またFrameMakerやInDesignから移行して成功をおさめられているお客様で、コストの面では(金額という)わかりやすい結果をマネージメントに見せることはできても、コンテンツの質の向上という意味ではやはり数値化というものはむつかしいというお話を聞きました.これも本当に感じるところなのですが、コンテンツを良くして行くことは、組織と読み手(お客様)の間にお金には代えがたい関係を築くことの基礎になります.いわば戦略・姿勢の問題です.マネージメントがその点に理解を示してくれない限り、コストとROI(投資対効果)というお決まりのループに落ち込むことになります.これは永久にDITA導入の課題ですね.

また、いざDITAを導入するにあたっても必ずしもメンバーをそろえることが出来ない.既存のメンバーは、現行のシステム(または制作工程)で手いっぱい.DITAの良さを自分で感じ取っても、自分ではわかっても、忙しい他のメンバーに広げてゆく余裕がない.また導入を決める際も、上司と自分の二人で「俺たちがケツを拭けばいいんだから」と決意を固めたというお話もありました.みんな身に詰まるお話でした.

それから最後の方でDITAユーザー会の会長を務められている横河電機の針ヶ谷さんが「ここで成功されておられる方は、みな会社の体力もあり、システムのメンテナンスをやってゆけられたいる方なんですよね」(ニュアンスが違っていたらすみません)とおっしゃっていたのも大変心に残りました.DITAの導入は決して一時(いっとき)で終わるものではありません.システムを構築した時点では十分であっても、世の中の流れの中で陳腐化したり、システムの仕組み自体もテクノロジーの発展に伴って、バージョンアップをしてゆかないと気が付いたときには取り残されていることもまれではありません.メンテナンス費用というものは目に見えるのとかく削減の対象になりやすいのでしょうけれども、これをケチッていると、システムをわかる人を継続的に確保することが困難になり、メンテナンスをやろと考えたときに「わかっている人が誰もいなくなった」となっていることも不思議ではないです.システムを支える人、携わるは決して固定的ではありません.企業では定年になればいなくなります.ですから、DITAのインプリメンテーションと言っても、自分のところに特有のことを多くやっている場合は要注意と思います.

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そんなお話を伺った後東京ミッドタウンの公園のイルミネーションを横に見ながらホテルに向かいました.今回のDITA Festaは例年とは違った意味で心に響くものがあったと思います.