なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか

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なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか ロバート キーガン, リサ ラスコウ レイヒー 英治出版

この本はちょっと高いのですが、いわゆる怪しげな自己啓発モノとはまったく異なります.この本を手に取った私が持っていた問題意識は次のようなものでした.

  • 職場はたぶんフルタイムなら8時間は拘束され、人生にとって睡眠と同様に大きなウェイトを占める場です.
  • その職場でどのように仕事に向き合って過ごせるのかはとても大切です.
  • しかし現実の職場の姿は、弱肉強食、上意下達、下手をすればパワハラのオンパレードで、人は如何に自分をよく見せ、守ろうと必死になっています.
  • いかにも仕事をやっているように業務報告を書き、人に助けてもらってもあたかも自分がやり遂げたがごとく報告する.問題があっても中国語で言うところの「没問題!」(大丈夫、問題ありません!)で真実を共有しようとしない.
  • 結果として、会社という組織でみれば極めて不要な領域にエネルギーが使われており、下手をすればそれが手痛い失敗として跳ね返ってくることもあるのに、誰もそれを直そうとしない.

そのような中で、私はこの本の表題「なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか」に強く共感するものがありました.それはまずもって自分自身が弱いから.でも誰もが自分の弱さを明らかにしても、それが評価と査定を下げる原因となるのではなく、それを共有し、克服するチャンスを与えられるバックグラウンドが組織にあれば、どれほど人と組織は成長できるのか?に期待するところがあったからです.

この本では冒頭で次のように述べられています.

「実は組織に属しているほとんどの人が、本来の仕事とは別の「もう一つの仕事」に精を出している.お金ももらえないのに、その仕事はいたるところで発生している.大企業でも中小企業でも、役所でも学校でも病院でも、営利企業でも非営利団体でも、そして世界中のどの国でも、大半の人が「自分の弱さを隠す」ことに時間とエネルギーを費やしている.まわりの人から見える自分の印象を操作し、なるべく優秀に見せようとする.駆け引きをし、欠点を隠し、不安を隠し、限界を隠す.自分を隠すことにいそしんでいるのだ.思うに組織でこれほど無駄を生んでいる要素はほかにない、もっと価値あることにエネルギーを費やすべきではないのか?この無駄が生み出す弊害ははっきりしている.組織とそこで働く人たちが潜在能力を十分に発揮できなくなってしまう、ということだ.その損失はあまりにも大きい」

この本の筆者は有力3社の実例と大人でも発達できるとの分析をもとにして「発達志向型組織(DDO=Deliberately Developmental Organization)」と呼ばれる組織文化を作ってゆくための道筋を紹介しています.

たぶんこの本はまちがいなく私のような平社員でなく、管理職や経営クラスの人が読んだ方がよいでしょう.でも、たった一人であっても、どのように自分の実践を通じてDDOという組織への共感を得てゆくのかもちゃんと述べられています.(p.323

「あなたが組織の正式な権限をもっておらず、DDOでない組織で働いていたとする.そのような環境で、どうすれば日々成長しつづけられるのか?以下の慣行を試してみよう.」

  • 一緒に成長する「相棒」をつくる.
  • 自分の能力の限界(エッジ)について情報を求める.
    「あなたは私のことをよく知っていて、私を成長させ続けたいと考えてくれていると思います.私はどのよな点で行動を変えればもっと大きな成果を上げられそうだと思いますか?」
  • 信頼できる同僚から、有意義なフィードバックを、日常的に少しづつ受け取る.
  • 成長に向けた取り組みに上司を引き込む.
  • お手本にできる人を探す.

私の思いだと、自分の弱さをさらけ出し、しかしそれを同僚がバックアップしてくれることを信頼する.そして、同じような人に対しては全面的な協力を惜しまない、という日々の実践なのか?と思いました.