マイクロソフト伝説マネージャーの世界№!プレゼン術

私自身はあまりプレゼンを行う機会はありません.あまりというよりほとんどないのが本当です.昨年仕事のオファーがあって、必死に提案プレゼンをお客様に行ったのが、今考えれば最後です.(プレゼンが悪かったのか、結局失注しました!)という訳でどちらかというと、やるよりプレゼンは聞くのが多い方です.でも機会があったらなんとか気持ちよく仕事をいただけるようなプレゼンをと考えています.


そんな私ですが、昨年Amazonで別の本を買ったときに目にしたのがこの本「マイクロソフト伝説マネージャーの世界№!プレゼン術」です.作者は澤円(さわまどか)さんという方ですが、実は大変な人でした.


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マイクロソフトにはっ全世界に約10万人の従業員がいて、そのなかでトップの成績を収めた十二名ほどに『Chairman's Aword』という章が毎年与えられます.授賞式は三万人を収容するスタジアムで行われ、ごく普通のならば、一生味わうことのできないような圧倒的な興奮と感動を体験します」

これだけ読むと「ああ、やっぱり優秀な人なんだな~?」と思ってしまいますが、

マイクロソフトに入る前、私は小さなIT会社に就職し、エンジニアとしてのキャリアをスタートさせました.とはいえ元はバリバリの文系人間で、大学では経済学部に在籍していました....ミーハーだった私は『システムエンジニアってなんだかカッコイイな』という軽い気持ちでプログラマーを志しました.しかし会社に入ってみると私より優秀なエンジニアはゴロゴrいて、あきらかに私が一番のダメ社員でした.人一倍、技術的な知識、理論、仕切るを習得していかなければならないのですが、なにしろベースがわかっていないので難しい話が理解できない.そんな状況でしたから、何よりもまず『自分自身にわかりやすく説明する』という作業をしなければなりませんでした.専門家ならすぐわかる内容でも、いちいちわかりやすく噛み砕き、懇切手稲にに自分自身に説明する.そんな手間のかかる作業をひたすら繰り返さねばならなかったのです.」

「ところがしばらくすると私の周囲でちょっとした変化が起き始めます.社内のエンジニアでない人たち(技術的に詳しくない人たち)から、「ちょっと、ここを教えてくれないか」「この機能について説明してくれないか」という問い合わせが入りだしたのです.もちろん私は自分自身に説明したのと同じように、わかりやすく、懇切手稲に説明します.すると彼らは喜んで『専門家の説明は難しすぎて理解できないけれど澤の話はわかりやすい」と口々に言い、徐々に評判になってゆきます.すると今度は『澤の説明はわかりやすいから、営業に同行させて、お客様に説明させよう』という話に発展していったのです.私は『落ちこぼれのエンジニア』だったからこそ『わかりやすい説明』という部分がクローズアップされて、徐々に頭角を現していったのです.」

というストーリーなのです.いやなかなか面白いです.

澤さんはプレゼンのゴールとして、

① 聞いた人がハッピーになる
② 聞いた人から行動を引き出す
③ 聴いた内容を他人に言いふらしたくなる

の三つの要素を上げています.いままでとかくプレゼンというと、「いかに自分の考えを伝えるか」という技術に落ち込みがちだったのですが、たしかにそれは重要なことの一つであっても「相手の共感」を呼び出してハッピーになってもらわないと、その次の行動(決断⇒例えば自分のところの製品を買ってもらう)にはすすんでもらえませんよね.

私の場合で考えると、とかくその前の段階で止まってしまい、相手に伝える本質をつかむ点で行き届いていなかったと反省しています.

あとこの本を読んでいて思ったのですが、常に自分がナンバーワンの地位でいることなんてできないことです.

「自社の精進やサービス問題があって、自信を持っておすすめできない」という場合は必ず存在します.ここで澤さんは厳しく戒めます.「『商品が悪い』『企画がイマイチ』『価格が高すぎる』などの他責思考でいるというのは、プレゼンターである自分自身の存在を否定しているのと同じです.」

しかしやはり現実には品質や価格ではなかなか勝負できないという場面があります.

「そういうときには「自分に何ができるのか」という発想に切り替えるというアプローチが効果的です....この商品に関しては社内で私が一番詳しいです....なので、何か困ったこと、わからないことがあれば、なんでもいつでも連絡してください.世界一の私がしっかりと御説明させていただきます.」

「必ずしも商品やサービスの価値そのものを起点にしなくとも、『自分自身』を起点にして『お客様のメリット』や『ハッピーな未来』を創出することはできるのです.」

「プレゼンターである『自分自身』が商品となる.究極を言えば、プレゼントは商品やサービス、企画内容に依存するものではなく、『人』に依存するものです.それはつまりプレゼンターである『あなた自身』が商品となることです.どんな状況でも決して他責にすることなく、すべてを自分事として受け止め、自分を起点にしたあらゆる要素をフル稼働して『お客様のハッピーな未来』を描き、それを伝える.そんなプレセンターに人は心を打たれるのだと私は確信しています」

考えてみれば自分も車を買うときは、車そのものではなく説明の営業の人を信じるか信じないかで買っていました.その営業の人は立派なプレゼンターだったのだと思います.

ちなみに澤さんはこの本もプレゼンの一環であるといっています.確かにそのとおりで、私は会社の同僚に本を進めたくなり、自分もプレゼンをやるならこうしようという根本を得たように思います.澤さんの本を通じたプレゼンは成功しています.

年末に息子が帰ってきたので、この本の話をしたところ(ときどきマイクロソフトに仕事で行く機会があるそうで)、澤さんには「幾度かエレベータで会った」と言っていました.本の表紙にあるように恐ろしく髪の毛の長い方だそうです.