統一コンテンツ戦略

DITAの和書というには非常に少ないので、たぶんDITAを検討されたり実践されたりしている方はご覧になっている本に、「DITA101 執筆者と管理者のためのDITAの基礎」(2011年刊 DITAコンソーシアム訳)があります.私も非常に参考にさせていただいています.

イメージ 1


ディテールにこだわりますが、この中のp.55からの「DITAの計画」の「統一コンテンツ戦略の開発」に次のように書かれています.

「DITAは、単なる構造化ライティングでも単なる再利用でもありません.方法論を転換して、再利用に、オーサリングの分担や協力に、そして 文書 よりもコンテンツのライブラリーに重点を移すことになります.このことはどのように作業するかを定義するための統一コンテンツ戦略を必要とします.
統一コンテンツ戦略とは、カスタマーへの最適供給のための最終的な(definitive)ソースにコンテンツを統一する(集める)ための実行計画です.
統一コンテンツ戦略についての詳細は、我々の本をご覧ください(Managing Enterprise Content: A Unified Content Strategy).統一コンテンツ戦略がなければ、DITAは コンテンツ作成の単なる一つの方法であり 、コンテンツへの付加価値はありません.」

結構大切なことが書かれています.DITAには統一コンテンツ戦略が必要で、そうしなければDITAを導入してもそれは単なるコンテンツの作成方法を変えただけで、コンテンツそのものに付加価値はつかないということなのです.

DITAを導入される動機はいろいろなものがあります.

・DocBookで作っていたがシステムが古くなってしまったのではやりのDITAで置き換えたい.
IndesignやFrameMakerで作っていたが複数メディアの展開のためDITAに置き換えたい.
・多言語展開のための翻訳経費を削減したい.

これらは個々には大切な事柄ですが、いままでこれらを越えるようなお話はあまり聞いたことがありませんでした.それがコンテンツに付加価値を与える統一コンテンツ戦略なのでしょう.

まず「統一」のつかない「コンテンツ戦略」は次のように定義されています.


Content Strategy Definition
Getting the right content to the right user at the right time through strategic planning of content creation, delivery, and governance.

いわく、「戦略的なコンテンツ作成、配布、管理のもとで適切なコンテンツを適切なユーザーに適切なタイミングで届けること.」

つまりこれは(私的に意訳して考えれば)トピックのライブラリを作り、そこから必要なトピックをマップで束ねて、ユーザーの必要とするメディア(HTML、PDF、EPUB、もしくはVideo)などで如何に効率的で有効なタイミングで提供できるかが、今後の企業や組織の競争力を決する重要なポイントになるということで、DITAはそのようなコンテンツ戦略を支えるためのバックボーン(もしくは土台)の役割を担うであろうということです.

和訳されていませんが、DITA 101で言及されている、"Managing Enterprise Content: A Unified Content Strategy"(Ann Rockley、 Charles Cooper著)は、2002年に初版、2012年に改訂版が出ておりAmazonから入手できます.(評価は五つ星★です!)

イメージ 2



第一部「The basis of a unified content strategy」(統一コンテンツ戦略の基礎)の第一章の最初にはこのように書かれています.

Content: The lifeblood of an organization.
Organizations create tremendous volumes of content to support their products, services, and business processes. Getting content out to the right customer at the right time and in the right format is critical to an organizations's success.

拙訳:
コンテンツ: 組織の生命力
組織は膨大な量のコンテンツを、製品、サービス、ビジネスプロセスのために生み出しています.コンテンツを適切な顧客(ユーザー)に適切なタイミングで、適切なフォーマットで届けることが出来るか否かは、組織の成功にとって決定的に重要です.

統一コンテンツ戦略はこのようなものを目指すものなのでしょう."Managing Enterprise Content: A Unified Content Strategy"は洋書なので英語が苦手私にはなかなか読み応えがありますが、少し頑張って読み進めてゆきたいと考えています.

DITAをお考えの方も是非御参考にしていただければ幸いです.