多言語マニュアル

先日次のような問い合わせがありました.「中国語用のマニュアルを中国語簡体字でつくっているのだが、ハードウェアやメニュー表示の用語だけを中国語簡体字にして、英語などの各国語のマニュアルにできないか?」というものです.これはどういう意味かというと、ハードウェア製品は基本的に各国の消費者向けに機器本体に刻印される文字や、LCDディスプレイの表示がローカライズされます.基本的にはこれでいいんですが、これを中国でなく別の国の人が使う場合、不便なのでその国の人が見てわかるようなマニュアルが欲しいということです.さすが新興著しい中国ならではの話です.中国はものづくりの拠点なので、様々な国の会社の中国法人があります.このような方たちが中国語向けの機器を使う場合、英語ならばともかく中国語で表示されていてはマニュアルがないと大変ということなのでしょう.
 
私が携わってきたプロジェクトでは、各国語のリソースをすべて外付けにして、マニュアルそのものは1つのスタイルシートで処理するように作ってあります.でも今回のはそれでは対応できません.このように1つのマニュアルの中に複数言語が混在するというの対応したのはかつて一回だけです.これはDITAを御使いのお客様だったんですが、それでもマニュアルの先頭に良くあるPL法表記を各国語で表示するというものでした.でもマニュアル本文は英語です.各国語の識別もtopic/@xml:langでした.つまりtopic単位での多言語言語マニュアルです.
でも先に書いたお客様の要望の場合、topic単位でなくフレーズ単位で書き分けねばなりません.さすがにこのレベルまで対応したスタイルシートは作ったことはありません.やはりこのような要望はグローバル化著しい今の世界を反映しているものですね.
 
さて、どうするかですが、英語のマニュアルに中国語の単語をちりばめる程度だったら、別に今のままでも出来ちゃいます.何故かと言うと、ご存知のように漢字のCJK IdeographはUnicode上で独立したブロックを持っているのでXSL-FOで、英文のマニュアルに
 
font-family="Arial,SimSun"
 
などと書いてさえおけば、Formatterが自動的にフォントを選択してくれるからです.これなら西欧言語の場合だったらいけちゃいます.でも、これが日本語マニュアルに中国語単語をちりばめるとなるとそうはいきません.漢字自体がCJK Ideographとして統合されているので、Formatterで日本語の漢字、中国語の漢字などと判別させるのは土台無理です.やはり、xml:langをつかって、ちゃんと「書き分け」をするのが筋でしょう.例えば
 
<p xml:lang=ja">中国語で「こんにちは」は「<ph xml:lang="zh-CN">你好</ph>」です.</p>
として、
 
<fo:block font-family="MS 明朝">中国語で「こんにちは」は「<fo:inline font-family="SimSun">你好<fo:inline>」です.</fo:block>
 
と変換します.
 
よく小規模な説明書の場合、各国語を作るのがやっかいなので、仕向け国の言語分だけ全部まとめてマニュアルにしちゃっている例もたまに見ることがあります.仕向け国が違っても、機器本体の表示や刻印が変わらなければそれでもいいんでしょうが、受け取った方は手抜きをされているみたいであまり良い印象をうけませんね.
 
さてうちの会社の社長がこの前開催されたDITAフェスタの感想をブログに書いています.
 
確かにそのとおりで、今マニュアル作りは大変な時期にさしかかっていると思います.多言語のマニュアルをオーサリングするのも大変でしょうが、技術的にそれを支えて印刷物やPDFに出す方もちゃんと対応できなければならないなと考えています.