ドイツ博物館で見た電子計算機の源流

たぶんITの業界で働いている方は、電子計算機の歴史を習うときに、昔は真空管論理回路が作られ、それを山ほど集積して組み合わされて計算機システムが作り上げられたというような記述を読んだのではないでしょうか?私が業界に入ったころはそうでした.でも本や写真で読んだだけで実際に見たとか触ったとかしたことはまずありませんでした.

今たまたまドイツのミュンヘンに旅行で来ています.ホテルに一番近い観光スポットにドイツ博物館があります.ドイツのありとあらゆる産業技術の展示がこれでもかこれでもかとため息が出るくらい並んでいます.マニアックな人なら一日見ていても飽きないのでしょうけれども、私は女房と回りだして、寄る年波には勝てず、すっかり足腰が棒のように痛くなってしまいました.そんなときに出合ったのがコンピュータ関連の展示の場所でした.

ここで思わず体の痛みも吹っ飛ばすように目の前に飛び込んできたのが、超なつかしのカードパンチ機です.私は学生時代は応用数学FORTRANマークシートで紙カードにコーディングし、就職した1年目は官庁のSEルームに派遣で飛ばされプログラミングの仕事を始めたのですが、その頃の主役は紙カードだったのです.COBOLソースコードはすべてカードで入力し、コンパイルエラーが無くなるまではカードを抜き差しして修正してたのです.ですので仕事場ではいつでもコンパイルリストと紙カードを持って歩く毎日でした.(もちろんTSS端末もあったのですが、すべてはお客様優先だったので、メーカーの派遣SEでは、おいそれとは触らせてもらえなかったのです.)

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ビックリしたのですが展示されているカードパンチ機というのはまったく見た目が自分がつかっていたのと変わらない作りなのです.当時何回もミスパンチをしたりして、やりなおしていました.今ではスクリーンエディタが当たり前ですが当時はそんなものだったのです.

次に目に飛び込んできたのは、本当に使われていたUNIVAC I(現Unisysの前身、Remington Land社製)でした.外から見ると「真空管の塊の要塞」です.メモを取っておいたのですが、1956年当時使用されていたもので、5,600個の真空管、18,000個のダイオード3,000個のリレーで構成されているそうです.いやはやすごい代物です.

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これが進化して真空管トランジスタに置き換わっていった時代のシステムが、IBM 7070です.(ここには7074とありました)IBM7070は初めてのプログラム内蔵方式.これもびっくりしたのですが、中央処理装置、センターコンソール、カードリーダ、プリンタと私がある官庁に居た頃の、ホストマシンルームの構成と同じなのです.この最初の人形の前には、メモリのアドレス、データをコントロールするパネルが置かれています.これがプログラミングをやっている姿なのでしょうか?まさに機械語そのものを相手にしていたようです.

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次はこの後継のシリーズの有名なIBM SYSTEM 360です.だんだんモダンになってきた感じがします.

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あと昔のパーソナルコンピュータの展示もありました.以下はIBM Personal Computer.IBMの昔のロゴが懐かしいです.まだキーボードは配列が英語101とは相当違います.

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それから日本勢も健闘していました.東芝のTシリーズ、あとちょっと見づらいですが、NECのMultispeed Laptopと言われる16bit, 9.54MHz, V30をCPUに搭載したラップトップがありました.V30なんていうCPUご存知でしょうか?8086の上位互換で、NEC PC9801-VMに搭載されていた覚えがあります.

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最後はIBMの1311磁気ディスク装置です.展示によると記憶容量は2.68MB.この機種ではないですが、私の就職した頃はリムーバブルディスクをメーカーから上からケースを装着してお客様のところまで宝物のように持ち歩いた記憶があります.今のスマホSSDの容量と比べると涙ものですね.

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という訳でミュンヘンのドイツ博物館で、くしくも自分がIT業界に入ったころを思い出す、また本でしか習ったことのなかった黎明期のコンピュータの世界に出合うことが出来ました.特にIT業界はすさまじいスピードで進んでいるのですけれども、ちょっと昔を眺めなおしてみるのも大切でしょう.このような先人たちが切り開いてきた世界を垣間見せてくれたドイツ博物館に感謝したいと思います.