Team Geek (1)

このまえ「チーム開発実践入門」という本を読んだのですが、チームをキーワードにした本をまた買ってしまいました.

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(出版元のO'Reilly画像をお借りしました.)

名前は[Team Geek」.原著副題には「A Software Developer's Guide to Working Well with Others」です.「他人とうまくやるためのソフトウエア開発者のガイドブック」とでもいうところでしょうか?そういえば、もう何年もこの業界に居させてもらっていますけれど、こういう類の本というのはついぞ見たことがありませんでした.ナカナカいいかもしれません.

ところでGeekという言葉はあまり語感がよくありませんね.Wikipediaの解説を読むと確かに元は良い意味はあまりなかったようです.

「そもそも良い意味では使われなかったが、インターネットが注目されるようになると共に、コンピュータやインターネット技術に時間を費やし、深い知識を有する者が「ギーク」と呼ばれるようになった。現在ではけなす意味合いが薄れてきており、自称としても用いられている。なお、日本ではしばしば「オタク」と訳されるが、"geek" には「サブカルチャーの熱心な愛好家」という意味はあまり含まれず、「(コンピュータ系などの)技術オタク」という意味合いに近い。」

「技術オタク」には思わず笑ってしまいました.そう、いままでこの手の人を山ほど見てきました.本当にソフトウェア技術者(というかプログラマー)は、社会的常識がイマイチの変な人が多いんです.

この本ので書かれていることは多岐にわたりますけれど、うなずけるところがいっぱいあります.

例えば

「君はコードが書けるんだから、普通の人よりもずっとスキルがあると思う.でも仮に君が天才だったとしても、それだけでは不十分なんだ.天才だってミスをする.優れたアイディアやプログラミングスキルがあっても、開発したソフトウェアが必ずしも成功するとは限らない.今後のキャリアがうまくいくかどうかは、同僚たちうまく協力できるかにかかっている.天才の神話は不安の裏返しだと思う.多くのプログラマは、開始したばかりの作業を共有したいとは思わない.誰かが間違いを見つけて、このコードを書いたやつは天才じゃないなと思うかもしれないからだ.Benのブログを引用しよう.『完成してないものを見られたら、何か言われるんじゃないかと本当に不安だ.細かいところまで見られてバカだと思われないだろうか』プログラマにはよくあることだ.それが嫌だから洞窟に隠れて作業をする.誰にも失敗作を見せたくない.完成してから最高傑作を見せればいい.完も仕上がるまでは隠しておこう.そう思ってしまう.」

という感じです.これはプログラム開発のことなんですが、作者は何故ダメなのかについて

「『隠したらダメになる』いつも一人でやっていると、失敗のリスクが高くなる.そして成功の可能性が低くなる.そもそも、どうやって正しい方向に進んでいるとわかるのだろうか?」

とか

「1人で仕事をするのは大変だということをすぐ忘れてしまう.1人のときにどれだけ学習ができるだろうか?どれだけ早く進めるだろうか?ウェブには大量の意見や情報が集まっているが、自分の体験の代わりにはならない.誰かと一緒に仕事をすることで、みんなの知恵が集まってゆく.しょーもないことに1人でつまづいたら、どれだけ時間がムダになるだろうか?一緒に仕事をする人たちが君の仕事を見てくれて、間違いや解決方法を(すぐに)指摘してくれるとしたらどれだけ違うだろうか?これはまさにソフトウェア会社にチームがある理由だ.」

と述べています.

しかしほとほとほと考えるんですが、例えばプログラム開発でなくとも、この時代になっても「洞窟」にこもって仕事をする人はいます.洞窟の外からは何をやっているのかなかなかわかりません.週一の進捗会議の進捗報告でもこういう人の作業実態というのはなかなかわかりません.

何故隠したがるのかなんですが、これは恥をかきたくないという技術者としてのプライドなんでしょうか?あとSMSのようなものに未だに慣れていないというのもあるのかもしれません.

私なんかは洞窟どころでなく、わからないことがあればすぐRedmineに書き込んでヘルプを求めます.恥も外聞もありません.そういう行為が自分のためになり、他の同じことで悩んでいる人の役にも立つと固く信じているからです.

またたぶんリーダーなんかからみると、メンバーが何をどれだけわかっているかがわかれば安心できる(つまりそれに応じて仕事を割り振り調整する、わかっていなければ教育する)ということができるんですが、何がどれだけわかっているかを把握できないのが一番不安です.チームとプロジェクトがどういう荒波にさらされているのがわからなければ、対策のうちようがありません.

こうしてみると会社と言うのはまだチームがあるからいいです.チーム内でメンバーが間違った方向に行っていないかチェックできます.この業界、個人でやっているひとがいますけれど、そういう人は本当に大変です.よっぽど自己点検/自己分析ができる人でないとあらぬ方向に向かってゆきまねません.

この本はまだまだおもしろいことが書いてあるので、また紹介したいと思います.