XSLT3.0への道(14) 閑話休題 新しいXSLTプロセッサ

XSLT2.0のインプリメンテーションが事実上SaxonとAltovaくらいしかないさびしい状況であることを以前書きました.ともかくマイクロソフトがXSLT2.0を放棄してしまったことが大きいです.私の周りでも、XSLTプロセッサといえばあのMSXMLと信じて相変わらずXSLT1.0でシコシコと使っている人もまだまだいるのですから.
そんな中でXSLT3.0に向かって、新しいXSLTプロセッサが開発されているようです.開発者の名前は、Abel Braaksma.彼はW3CのXSLワーキンググループに入っていて、新しいXSLT3.0の仕様の策定にも参加しています.
 
 
また彼は新しいXSLT3.0の機能「高階関数(ハイオーダーファンクション)」について、Balisage The Markup Conference 2012で講演をしています.
 
 
その彼が開発しているのが、"Exselt"、F#で開発されている.netベースのXSLTプロセッサとのことです.
 
 
しかし、ApacheのXalanなどのXSLTプロセッサがXSLT2.0をすらインプリメントできず停滞している中、一気にXSLT3.0をやってしまおうとするのですから、その意気込みはたいしたものと思います.
 
でもはたしてオープンソースになるでしょうか?私はたぶん無理ではないかと思います.XSLT3.0の仕様は膨大です、開発には多大な工数がかかることは疑いの余地がありません.そしてオープンソースにしてもそこから何らかの形で収入を得る目途がなければ、事業を続けることはできないでしょう.Saxonが、プロフェッショナル版以上を有償としているのは無理からぬことです.
 
しかし、Saxonのメーリングリストを見ているとわかるのですが、本当に利用の仕方も質問のレベルも多種多様です.Michael Kayはその一つ一つに真面目に答えています.一つの汎用ソフトウェアを世に出して、生きながらえるというのは大変なことだと思います."Exselt"も使われ出せば同じような局面を迎えるでしょう.
 
最近思うのですが、オープンソースとまでは行かなくとも値段がそれなりに安くて企業がそれほどの決断をしなくても購入できるソフトと、超お高くて機能は高いんだろうけれども使い込まれていない、つまり「こなれていない」ので、値段の安い方から見るとがっかりするような結果を出しているソフトがあります.後者は必然的に使われなくなります.負のスパイラルに落ち込んでしまうわけです.
 
やはり多くの人に使ってもらうことでフィードバックをうければソフトウェアの品質は向上します."Exselt"もうまく舵取りをやってもらいたいと思います.