日本語マニュアルと英語マニュアル

知らない間にDITA Open Toolkitはバージョンが1.6.3になっていました.最近ほとんどDITA以外の仕事をやっていたこともありますが、DITAの方はお客さんの使っているCMSがDITA-OT1.5.3までしかサポートしないために仕事が一段落した後も「まあいいや」ということでダウンロードもしていませんでした.
 
新しい仕事で「どのDITA-OTを使うか?」ということになり、「古いよりは新しい方がいいだろう」と考えて1.6.3を落として、1.5.4と比べてみました.リリースノートを見ても書いてないように見えるのですが、大きく向上した点があります.それは非ASCIIのファイル名やフォルダ名の扱いです.1.5.4ではこういうmapを処理すると、いいところまで行くのですが、

chunk:
    [chunk] unknown protocol: d
    [chunk] unknown protocol: d
    [chunk] unknown protocol: d
    [chunk] unknown protocol: d
    [chunk] unknown protocol: d
    ...以下同じ
map2pdf2:
 [pipeline] Failed to parse はじめに.xml: unknown protocol: d
 ...
 
という感じで途中でダメになっていました.私はDITA-OTをDドライブに入れてデータもその下にのフォルダにしていますので、"unknown protocol: d"というJava特有のエラーメッセージは、"D:\DITA-OT-1.5.4\...."をURIとして解釈して、"D"を"HTTP"のようなプロトコル部分と誤解釈してしまってのエラーです.
 
それがDITA-OT 1.6.3では、
 
chunk:
                <==エラーなし
maplink-check:
 
で通ってくれるようになりました."map2pdf2:"でも同じです.これはDITA-OT 1.6の大きな進歩です.
 
でも、実は会社で扱っているXMetaLは前からこの問題がわかっていたみたいで、JUST SYSTEMSは独自のxmfoプラグインを作り、非ASCIIのファイル名はASCIIのファイ名はテンポラリファイルに置き換えて山ほど複雑なステップを通してちゃんとPDFを出していました.
 
一般にDITAを使われるお客様でもCMSベースでないファイルシステムベースのお客様は、どうも日本語ファイル名を好き好んで使う傾向が多いようです.
 
私はもっぱらDITA-OTはXMetaLについているようなカスタマイズできないものではなく、外付けのDITA-OTばかり使っていました.ですので日本語ファイル名をつけるという「感覚」が到底理解できません.
 
でもサンプルファイルを見ていると、ファイル名ではないのですが、中にはこんなidのつけ方もあります.
 
id="AB9375C0_解説書_01"
 
こういうようなidのつけ方を見ていると「がっかり」してしまいます.日本語ファイル名もそうなんですが、この島国日本だけを対象にシコシコと未来永劫マニュアルを作り続けてゆくのでしたら日本語のファイル名も、日本語の入ったidも「あり」かもしれません.

 
でも、今の時代世界に向かってものを売って行く以外、日本の産業の生きる道はないように思えます.そうすると、たとえ現在は「日本語と英語だけのマニュアルでいいや」ということであっても、多言語にむけた用意だけはちゃんとすべきなのではないでしょうか?
 
そう考えると、たとえ日本語と英語だけの場合だけであったばあい、企業はどちらの言語をベースにすべきでしょうか?私だったら躊躇なく英語を選択します.だって英語のファイル名やidだったら更に翻訳しても問題なく使えるでしょうけれども、日本語だったらたぶん意味がわかってもらえず目も当てられないからです.
 
日本語⇒各国語と英語⇒各国語というパスを考えてみると、後者は成り立ちますけれども、前者はやはり日本語⇒英語⇒各国語というパスにならざるを得ないのではないでしょうか?
 
つまり日本で生産している製品であっても、世界に向かって売るのならマニュアルは英語ベースで書くのがベストだと思います.各国語に訳すことになったとき、それを担当するのは必ずしも日本人のスタッフではないかもしれません.英語ベースだったらこういうとき対応できるでしょうけれども、日本語ベースだったらどうにもならないからです.
 
これは日本語特有の「あいまいさ」にも起因すると思います.わたしも日本語版と英語版と両方ある製品を作ったことがあるのですが、日本語でマニュアルを書いてしまうと、たとえ自分が書いた日本語の文章であっても英語に直すときに首を傾げてしまうことがしばしばでした.
 
どうしても日本語で書くとあいまいさが入ってしまうのです.結局英語で最初から書き直しました.日本人が英語でかけば、まずはあいまいさのない文書で書くことができます.これから日本語に訳すのは難しくはありません.
 
さてマニュアルでなくソフトウェアを作る場合も、「日本国内だけで売るのか?」と「海外でも売るのか?」でずいぶん作る前の最初の「構え」が違うのを私は知っています.マニュアルを作る場合もこの「構え」というのはずいぶん大切なことではないか?と感じます.