JoAnn Hackos博士のWebinar (3)


JoAnn Hackosさんが成功のカギとしている2つ目の項目は、

"Truly understanding the value of being able to reconfigure your content"

です.曰く

「あなたのコンテンツを再構築することが出来る価値を真に理解する」

というものでしょうか.なかなか奥深い言葉に思えます.ここで再構築といっているのはもちろんsingle sourcing, modularized, topic-basedでの前提でしょう.

それではDITAの導入を検討しましょうというときに、あなたの既存のコンテンツはたぶんsingle sourcing, modularized, topic-basedでしょうか?たぶんそうではないからDITAの導入をされるのでしょう.

例えば広く使われてきたDocBookですが、single sourcingで使用するということは可能です.DocBookのスタイルシートはXSL-FO(つまりPDF)だけではなくて、HTML(XHTML,HTML5)、HTML HELP、EPUB、EPUB3、Java Help、man pageと豊富です.もしかしたらバリバリに活用しておられる方もいらっしゃるのかもしれません.

しかしDocBookではmodularized, topic-basedは困難でしょう.前回「トピックベースのオーサリング、モジュール化という考え方はないように思えます.」と書きました.DocBookでは対応する概念は「モジュラー化」という言葉で表されるようです.そしてそれは実体参照か、XInclude、XPointerを使用して実現されます.

Chapter 23. Modular DocBook files

今までいろいろなDocBookのインスタンスを見てきましたが、私は実体参照はありこそすれXInclude/XPointerまで踏み込んでいるのは見たことがありません.(XInclude/XPointerはDITAのconrefに該当しますね)また実体参照も実のところは分散オーサリングを目的にしていて、どこでもパーツのように使えるモジュールを作るという考え方ではないように思えます.

またこのような「モジュラー化」によっても、DocBookにはDITAのconditional processing(条件処理)に該当する機能がありませんから、汎用的な文書モジュールを作るというのは、ごく限られた用途、例えばよくマニュアルでよく目にする共通的なPL表記などに限られてしまわざるを得ないように見えます.

DocBookの例を出しましたが、コンテンツを再構成する価値を理解するというのは、実は難しいことではないでしょうか?なぜならそれは少なくとも自分の環境では実現していないからです.ですから理論的にそのようになったらどのような恩恵が組織にもたらされるかを、頭脳のなかで推論ししなければなりません.実際DocBookをお使いで、DITAに移行するメリットを十分見いだせないという話を聞いたことがあります.本当に「Truly understanding」という境地に達するには、検証段階でsingle sourcing, modularized, topic-basedなサンプルをDITAで自ら作ってみて現在のコンテンツと比較し、自分自身でその価値と可能性を体感しないと無理のではないかとも思えます.

しかし日本でもDITAは着実に広まっていますから、コンテンツの再構築の効果を学び取り、必死に組織のトップを説得する提案をされている担当者の方もいらっしゃるのでしょう.実に頭が下がる思いです.

※ なおDocBookにはそれなりに携わってきましたが、あまりDITAとの比較でどう考えるか?という機会はありませんでした.以下のOrcaleのサイトにDocBookとDITAの比較の投稿があります.少し前のもので短いですが的を得ていると思います.

Modular Docs Part 1: Why You Want Modular, Topic-Oriented Documentation

Modular Docs Part 2: DITA vs. DocBook