ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か

ノートパソコンが壊れて修理中なので少し本を読む時間が増えました.最近読み直した本です.

 
『いや少しもわかっていない.会社始まって以来の赤字なんだ.あまりに悲惨で、そこから抜け出せるかどうかさえわからない.その一番のネックになっているのが君のこの工場なんだよ.』私は、すっかり意気消沈した.
『わかりました.それで、いったい私に何をしろと?私がこの工場に来て六ヶ月たちますが、それ以来、確かに業績は良くなるどころか悪化しています.ですが最善は尽くしています』
『アレックス、はっきり言おう.これから三か月の間に、この工場を立て直すんだ』
『三か月?そんな短い時間で立て直すなんて無理です.そんなことぐらいわかっているじゃないですか』
『だったら経営会議でこの工場の閉鎖を提案するしかない』
 
こんなショッキングな序章で始まるのがこの本「ザ・ゴール」です.
 
イメージ 1ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か
 
 
 
 
 
 
今の会社に入る前、派遣である工場に行っていましたが、そこで生産管理をやっている人から、「Mさん、スゴイ本が出たよ.今会社でみんなに回し読みしてるんだ.ずっと日本で発禁になっていたんだ.」といわれて紹介されました.発禁とは穏やかじゃないなと思って、早速Amazonで注文して読みました.
 
ユニコ社のとある工場長を務めるアレックスに降って沸いたような工場閉鎖の通告、彼は3ヶ月以内で工場を立て直し、成果を上げなければなりません.そんななかであせるアレックスは大学時代の恩師ジョナに出会い、工場再生へのヒントをもらいます.
 
ところが最初の問いかけはなんと「企業の究極の目的とは何か?」です.
 
『君は自分の問題が、何だかわかっているかね』
『効率を上げることです』
『いや違う、そんなのは目的ではない.君の問題は、目標が何かわかっていないことだ.それからどんな会社であっても目的は同じだ.一つしかない.』
 
「品質の高い製品を効率的に作る」「技術」「効率と品質」「マーケットシェア」
様々な考えがアレックスの頭をよぎります、そして彼は一つの結論にたどり着きます.
 
『そうかやっとわかったぞ.企業の究極の目標はお金を儲けることだ.』
私は躊躇した.私の考えはあまりに単純すぎる.間違っているに違いない.ジョナに笑われるかもしれないと急に不安になった.だが思い切って言ってみた.
『メーカーの目標はお金を儲けることです』
私はきっぱりと言った.
『それ以外のすべてはその目標を達成するための手段です』
ジョナは笑っていない.
『よくできたアレックス.よくやった』」
 
そして評価指標として「スループット」「在庫」「作業経費」があると告げられます.
 
『わかりました.ですが、この三つの評価指標を私の工場にどう当てはめたらいいのですか?』『君が工場で管理しているすべてのことはこの三つの指標で測ることができるはずだ.』
彼が言った.
『すべて?』
私は訝った.彼の言葉を完全には信じられない.
...
 
ここから工場の立て直しへの道が始まります.しかしこれだけのことは決して彼アレックス一人ではできません.私はここに出てくる、製造課長のボブ、経理課長のルー、資材マネージャーのステーシーなどと取っ組み合いの議論をしながら、果敢に人間くさい建て直しに取り組んで行く様がとてもうらやましく思えます.私たちソフトウェアの世界では、すべてがメーリングリストで進んでいき、顔をつき合わせて仕事をやるということが希薄だからです.
 
この物語はハッピーエンドで終わりますが、このエリヤフ・ゴールドラット博士が提唱したTOC(制約条件の理論)はアメリカだけでなく発売後の日本にも大きな影響を与えました.
 
 
博士は本のあとがきをこう結んでいます.
 
「生産とは産業の核である.そして産業は国富の核である」
 
製造業が競って生産を海外移転する中、博士が生きていたら今の日本の姿はどのように映るでしょうか?非常に考えさせられます.